化粧坂・愛宕神社(桜井市 初瀬)

  長谷寺に向かう途中に、與喜天満神社の御旅所がありますが、この御旅所の少し手前のT字路の角に道標があります。1726年に立てられたもので、「右いせみち」とあるように、右に折れると初瀬から宇陀に通じる伊勢街道です。道なりに進むと、ほどなく化粧坂という優しそうな名前とは裏腹に、健脚向きの山道にはいります。けはい坂、あるいは、けわい坂と呼ばれ古くは嶮坂、消灰坂とも書かれていたようです。途中に「おはぐろ石」という巨石があり、このあたりで旅人たちが服装の乱れを整えるべく、衣装替えや化粧直しをしたという伝承が残っています。

  江戸時代には本居宣長もこのあたりを訪れ、その時の模様を「菅笠日記」(1772年・明和9年)に残しています。 

けはひ坂とて さがしき坂をすこしくだる 此坂路より はつせの寺も里も 目のまへにちかく あざあざと 見わたされるけしき えもいはず。・・・ 

  急勾配の道をさらに上ると、峠の上に愛宕神社があります。ここは長谷寺本殿を正面に見ることが出来る素晴らしい隠れスポットです。「さくらい100選」にもビュースポットとして選ばれています。特に春の桜と秋の紅葉は見逃せません。 愛宕神社は桜井市史によると「俗に愛宕山といわれ、長谷寺の南正面にあたる山頂。ご神体の白馬に乗った愛宕権現神像は、昭和十七年の火災で焼失し、再建されないまま、いまは廃社にひとしい状態。旧社前に一対の石燈籠(享保十二年)のみが残る。」とあり今は跡地に、小さな祠が建てられています。

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