長谷寺 奥の院
長谷寺の北約3km、標高430mに鎮座する瀧蔵神社は、長谷寺の奥の院として知られ、長谷寺へお詣りしても瀧蔵神社へもお詣りしないと、御利益は半減すると伝えられる古社です。
瀧蔵神社のもう一つの顔は参道入り口の石垣の上にある、奈良県指定天然記念物の枝垂れ桜です。太い幹が参道に覆いかぶさるように水平にせり出した、独特の味わいのある樹形に咲き誇る桜は、石垣の上から見るもよし、参道から見上げるもよし、いろんな角度から楽しめます。樹高は約4.2m、幹周り約3m、樹齢は推定400年で毎年4月中旬に、見事な花を咲かせてくれます。 「権現桜」は、その昔、地元の村老の夢枕に権現様が現れ、堂の傍に枝垂桜を植えて欲しいとのお告げがあり、この地に植えられたのが起源と伝えられそれが「権現桜」という名の由縁です。
瀧蔵神社はご祭神は伊弉冊尊(いざなみのみこと)(右殿)、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)(中殿)速玉命 (はやたまのみこと)(左殿)で、神話唯一の夫婦神と御子をお祀りしています。創建年代は不詳ですが、延喜20年(921)頃からの記録があり、今昔物語をはじめは長谷寺関係の古文書にも、瀧蔵にまつわるいろんな出来事を伝えています。たとえば鎌倉初期の保延四年(1138)に書かれた「長谷寺観音記」には、74代鳥羽天皇妃が長谷寺に参詣された時、滝倉権現の力で懐妊の姫君を、若宮(後の近衛天皇)と取り替えて貰ったという誕生の秘密が記されて有り、お礼に「滝倉の拝殿を造営した」という記録が残っています。
拝殿の奥の高い瑞垣の上には、鮮やかな朱塗の三間社・流造の本殿が建っています。大きな本殿ではないのですがこの場所に相応しいおもむきのある建物です。また瀧蔵神社の社叢は、椎や樫が優占する暖地帯の極相林の状態で保存されており、この地域における極相林の典型として、県の天然記念物に指定されています。