谷首古墳 (桜井市 阿部)

 桜井市阿部字谷汲にある巨石古墳です。30年ほど前から徐々に周辺が宅地化され今は住宅街に取り込まれた形になっています。しかし一歩足を踏み入れ石室に入ると7世紀の黄泉の世界が広がっています。阿部丘陵の中では最大規模を誇り、中世には墳丘が砦として利用され、現在は八幡神社が古墳の上に鎮座しています。安倍文殊院の近くにあり、開口部が若干狭いですが石室内は広く、古墳初心者の方でも抵抗なく古代のロマンを感じる事が出来る、おすすめの古墳です。

 墳形は一辺約40m(現状は南北41m、東西38m)、高さ約8mの方墳で石室は南に開口しています。石室の企画性は、飛鳥の石舞台古墳とよく似た大型の両袖式横穴式(全長13.8m)で、玄室部は長さが約6m、幅約2.8m、高さ約4m、羨道部は長さ約7.8m、幅約1.7m、高さ約1.7mの規模を誇ります。石室内から、かって、凝灰岩の破片が出土した事で、元々、家形石棺があったと思われます。築造年代は7世紀初頭~前半で、このあたりを本拠地にした豪族、阿倍氏関係の墳墓と考えられています。

清水眞一 1989「阿部丘陵遺跡群」桜井市教育委員会より引用