今 日出海大正・昭和期の小説家。評論家・演出家。初代文化庁長官。著書に直木賞作品の「天皇の帽子」等。
降る雪は
あはにな降りそ
吉隠(よなばり)の
猪養(いかい)の岡の
寒むからまくに
万葉集巻2-203 穂積皇子(ほづみのみこ)
歌の意味降っている雪よ、あまりたくさん降ってくれるな、皇女を葬った吉隠の猪養の岡は寒いだろうから。
穂積皇子天武天皇の第五子(実際には十人の皇子の第八番目と推定される)。恋の相手は兄高市皇子の年若い妃、但馬皇女。三人は天武天皇を父とする異母兄弟妹。年長の高市皇子は壬申の乱に功を立て持統女帝の時代大政大臣の位にあった有力者。二十歳近く年下の穂積皇子は蘇我赤兄の娘を毋とする。赤兄は近江朝廷の重臣で天武・持統朝からいえば戦犯者。穂積皇子が肩身狭い立場だったことは想像される。
歌碑の場所 44番国道165号から吉隠公民館への坂道を登り切った石段の横広場の隅に南面して建つ。